設立趣意書(昭和53年7月起草)
横浜国立大学工学部は異色ある校風と教育を誇った横浜高等工業学校を母体として、昭和24年新制大学の発足とともに誕生したものであります。大正9年の学園創設以来60年、学科の増設、大学院工学研究科修士課程の設置等教育研究体制の整備拡充に努め、創立当初の3学科は現在12学科、1研究施設および夜間学部の2学科となり、工学における総合学部に発展しました。この間、多数の教官の研究業績とともに約16,000名の人材を各界に送り、我が国科学技術ならびに工業の発展に大きく貢献しております。
この度、本学統合のため工学部も弘明寺から保土ヶ谷区常盤台の広大なキャンパスへ移転を完了しました。また昭和54年度予算として工学系大学院構想に関する調査費の配分をうけ、鋭意博士課程の設置も計画中であります。そもそも学園の社会的評価は教官の熱意もさることながら、多くの卒業生による努力の蓄積に負うところが極めて大きいと同時に、学園の名声は卒業生の誇りとなるものであります。我々横浜高等工業学校、横浜工業専門学校、横浜国立大学工学部の全卒業生は、本学工学部が長年にわたって培われた誇るべき伝統を、なお一層進展させることを願い、工学部創立60周年と大学の統合完了を記念して、ここに卒業生有志相諮り、財団法人横浜工業会の設立を企画いたしました。
この財団法人横浜工業会は横浜国立大学工学部の教育研究活動に対する後援を行い、科学技術および工業の発展ならびに国際交流に寄与することを目的とし、全卒業生の結びつきを図るものであります。
工学部が弘明寺から移転したために残された工学部研究センター(鉄筋コンクリート5階建、延面積735坪)は、昭和40年横浜国立大学大学院工学研究科修士課程のための施設拡充の一端として、神奈川県、産業界、卒業生ならびに大学職員から浄財を募り、国に寄贈したものでありますが、この度大学はこれを学内共同利用の建物として改修整備し、併せてその一部を財団法人横浜工業会も利用できる含みで文部省に予算要求することになりました。
なお、この施設は財団法人横浜工業会と通じて卒業生も学会、討論会、公開講座、講習会、講演会および懇談会等に利用することができます。
以上のような趣旨をもって財団法人横浜工業会を設立いたしたく存じますので何卒よろしくご賛同賜りますようお願い申し上げます。
昭和53年7月1日
財団法人横浜工業会設立準備会
会長 中川 赳